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業績が低下した場合に経営者が検討すべきことTOP10

 リーマンショックやコロナ感染拡大など経営をしていると10年に1度ほど大きな環境変化の波が起きる。そのような場合に、業績や資金繰りへの影響をできるだけ小さくするためにどのような対策が考えられるのか解説する。


1. 事業モデルによる売上の安定化


 不測の事態が生じた場合に経営者が一番リスクに感じるのは、売上が減少し長期低迷することではないかということかと思われます。コロナ禍では飲食業やエンターテインメント業などで大きな売上減少となりましたが、どのような対策が考えられるでしょうか。


 例えば、不動産賃貸業や業務システムサービス業といった業界は、市場環境の変化にそれほど大きな影響を受けない事が多いです。この点にヒントがあります。答えを言ってしまうと、前述の業界は、月額で決まった収入を得る契約、いわゆるサブスクリプション事業を展開しています。このようなビジネスモデルの場合、不測の事態が起きても、一定の収入が継続することが見込まれるため、業績や資金繰りの上で、相対的に安定性が高いと言えます。エンターテインメント業界の演奏家(個人事業主)は、コロナ禍でコンサート等ができなくなり収入が急減することになりましたが、音楽教室等を経営している演奏家であれば、一定の月額授業料を継続して得られるモデルになっているため、業績や資金繰りの面では相対的に安定していたであろうと言えます。このように自らの事業の中においても、都度売上型だけではなく月額固定型の契約形態を持つことで、リスクヘッジを図ることができます。全く新しい事業に打って出るというよりも、脚下照顧で自らのビジネスモデルを再度見直し、新事業・新販売方法として月額型のモデルを検討できないか、検討することをお薦め致します。



2. クイックヒット(経費削減)


 会社の費用は、変動費・固定費に区分されます。このうち、変動費については売上を上げるためにかかる仕入原料や製造人員経費であり、現場での地道な改善活動を行わないと削減できないものが多く、すぐに効果が出にくい性質があります。一方で、固定費は、人件費や家賃、旅費交通費や接待交際費などであり、経営者判断による契約解除や出張禁止令等により、不要不急の経費であればすぐに減らすことができます。しかも売上と連動することがなく、経費削減した金額そのままが利益創出額になりますので、クイックヒットと言われます。


 注意点としては、経費削減効果は1回のみであり、ゼロ以上は削減できない点です。例えば、業績悪化により出張全面禁止令を出した会社がありましたが、確かに旅費交通費や交際費などが限界まで下げることができたのですが、翌年もさらに削減できるかと言えば、ほぼゼロまできた経費を、それ以上下げる余地がないため、翌年度はクイックヒットがなくなってしまう、という点に注意が必要です。「昨年何とかなったから、今年も何とかなるだろう・・・」という考えで精査が出来ていないと決算直前に慌てることになりますので、ご注意ください。


3. 人件費の削減


 業績がどうしても上向かない場合には、難儀ですが、役員報酬を含む人件費の削減に手を付ける必要が出てきます。役員報酬については、削減するといわゆる定期同額から外れてしまい一部が税務上の損金にできなくなってしまいます。会社に繰越欠損金が沢山あるので損金不算入になっても構わないなどの場合を除き、慎重に検討が必要かと思われます。一旦、役員報酬は定期同額で支給したうえで、各役員から一部を自主返納してもらうという方法もあります。ただし、この場合には、原則的としては返納前の定期同額給与金額により源泉所得税を徴収することになります。役員報酬の取り扱いについては、ケースごとに注意点がありますので、事前に税理士にご相談いただくことをお薦め致します。


 役員報酬以外の人件費の削減については、月額給与を減額することは非常にまれで、賞与をカットすることが行われることが多いかと思います。その場合、やはり従業員のモチベーションにも影響しますので、業績回復した際には、賞与をしっかり原状回復するなど手当てを打つことも必要です。



4. 非事業性資産の切り離し


 自助努力として会社ができることとして、非事業性資産の売却や回収により資金を創出することが挙げられます。例えば、節税対策として加入した保険積立金、営業効果が不明な取引先の株式持合、ゴルフ会員権やリゾート会員権、役員への長期貸付金などです。これらは、貸借対照表の投資その他の資産に計上されていますが、よく検討すると事業に関係がないケースも多く、単に社長の趣味とか見栄で持っているケースが散見されます。これらは会社の貸借対照表を膨らませメタボリックにしている元凶であり、業績悪化時にはこれらを思い切って処分し、筋肉質の会社に生まれ変わる必要があります。金融機関へ協力を仰ぎたい場合などには、まさにこのような部分を処理し、自助努力の誠意を見せる必要もあります。



5. 仕入・経費の購入を翌月頭に回す


 資金繰りが対応できるのであれば、仕入や経費の購入タイミングをできるだけ翌月月初に回すことで資金繰りが良くなります。サイト1ヶ月の場合、当月の月末付近で購入すると、支払が翌月末までとなってしまいますが、仕入経費をたった1~5日程度遅らせて翌月月初に購入することで支払いが2ヶ月先(翌々月末)まで伸ばすことが可能となります。極端に言えば30日後支払が60日後支払に自動的に変わりますので、少し気を付けるだけで資金繰りが良くなる場合もあります。資金繰りが厳しい場合には、購入タイミングについても留意が必要です。



6. 取引先への支払条件等の見直し交渉


 資金が足りない場合でも、既に入金予定が立っており短期的に足りないだけなのであれば、「融通の利く取引先や単発の取引先に支払を半月遅らせてもらう」・「分割返済の依頼をする」・「支払条件の見直し交渉をする」といった方策をとることが考えられます。この場合、支払猶予を依頼することで信用問題となって即取引停止になるような敏感な取引先ではなく、返済緩和や支払条件交渉に持ち込んでもあまり問題にならない取引先かどうかの見極めを行うことが重要です。また、返済猶予をお願いする場合には、信頼関係を損なわないために、入金予定などを示し、いつ頃にどう支払を予定しているのか、返済予定をきちんと説明することが必要です。誠実に対応することで、次回の資金繰り悪化の際にも協力してもらえる場合もあります。


7.金融機関への返済緩和の依頼


 資金繰りの悪化が厳しく自助努力のみでは難しい見込みとなった場合、金融機関への返済をストップするいわゆる「リスケ(暫定リスケ)」を依頼する方法があります。資金繰りが厳しいにも関わらず返済を止めずに限界まできて企業自体が破綻してしまうのは一番避けなければなりませんので、一旦返済をストップして体力を付け、資金繰りが安定化してから返済再開をする方がはるかに良い方策だと金融機関も理解しています。資金繰りが厳しいからと言って金融機関が返済を迫るようなケースは非常にまれであり、地域経済や地域雇用のため事業者支援を掲げている金融機関がほとんどですので、基本的には安心して支援対応を依頼する方が良いと思われます。この場合、金融機関担当者が支援しやすいよう返済や入金の予定表などをもとに経営改善プランを持参して話をするのが望ましいと言えます。


 実は、資金繰りについては普段から金融機関担当者とコミュニケーションしておくのが良いです。資金繰りに余裕がない場合には抵抗があるかもしれませんが、担当者に自社の資金繰り表や月次試算表を提出し、普段から相談しておけばリスケのタイミングなどについても意思疎通が図りやすいです。これら資料については顧問税理士の会計事務所に依頼し、会計システムからスピーディーに電子提出できる体制などがあればより望ましいと言えます。


 なお、リスケをするということは約定返済を反故にするということになり、本来は、金融機関から一括返済を求められても仕方がない状況になることを意味します。それを返済緩和してもらえるのは、金融機関(債権者)の同意があるからであり、その点でも債権者たる金融機関にしっかりと説明・相談することは重要なことです。また金融機関としては返済緩和中の企業に新規融資をすることは難しくなりますので、企業としては基本的には金融機関から融資を受けることができなくなるという前提のもと、リスケを依頼する必要があることには留意が必要です。



8.資本性劣後ローンの依頼


 赤字続きの場合には貸借対照表が債務超過に陥っており、これが民間金融機関の新規融資において最大の障害となるケースが多くあります。損益計算書は黒字化したとしても、貸借対照表が債務超過のために新規融資が出ない、金利が高い、連帯保証を要求されるなど、中小企業の財務上の問題になります。そこで注目を集めているのが、債務超過を脱出のための日本政策金融公庫等による「資本性劣後ローン」となります。資本性劣後ローンとは、会社が倒産した場合に債権者として回収できる順位が低く、回収可能性が極めて少なくなるという点で、株式と性格が似てきます。そのため、貸借対照表では負債に分類されるのですが、金融機関の査定上は、自己資本と看做すことができ、そのため、債務超過を脱出している企業として評価することが可能となるのです。日本政策金融公庫からお金を借りるため債務が膨らむのが通常ですが、資本性劣後ローンとしてお金を借りた場合には、借りたお金が負債とならず自己資本と看做され、自己資本比率が上昇し、資本増強となります。従来は金利が高くなるケースがあることが障害でしたが、新型コロナ対策資本性劣後ローンの場合には、金利も最大で2.95%と低く設定されており、従来よりも魅力的な金融商品であろうと思われます。


 資本性劣後ローンの場合には、債務超過を脱するため、同時に民間金融機関からの真水の資金調達も検討可能となりますので、日本公庫と民間金融機関のコラボ協調融資という形も考えられるかと思います。


 なお、資本性劣後ローンは、金融機関側からすると一定の債権毀損を意味しますので慎重な審査になると思われます。過剰に資本性劣後ローンをしてしまうと、「過剰支援」になってしまう恐れもありますので、しっかり財務査定をしたうえで、会社の実態債務超過を確認し、必要な範囲でのローン付けになろうかと思われます。また、資本性劣後ローンは利益が出ると金利が高くなったり、5年等の一括返済になり、その時点でみなし資本効果が消失してしまいますので、あくまでも一時的な財務対策の一環として考えておいて方が良いのではないかと思われます。



9.税金・社会保険料の滞納はしない


 金融機関にリスケ依頼すると新規融資が出なくなるから、税金や社会保険料を滞納するという企業がありますが、これはおすすめできません。税金や社会保険料の延滞金の金利は非常に高く、借入金利の比ではありません。同じく延滞しとしたら、明らかに借入を延滞した方がコスト(金利)は安くなりますので、借入をリスケした方が経済合理性があります。また、税金や社会保険料は優先債権であり、滞納をしていると融資稟議を通すのが厳しくなります。したがって、税金や社会保険料の支払いを優先し、金融機関借入をリスケすることをお勧めしています。


10.休業・廃業


 事業見通しが悪い場合には、休業や廃業を検討される場合があろうかと思います。休業する場合には、事業活動をしていないため原則として税金はかかりませんが、税務署等には法人税等の確定申告をしておくのが望ましいです。これは2期以上連続して確定申告を提出しなかった場合には青色申告承認が取り消しとなり、休業前から発生していた多額の繰越欠損金が消滅してしまうデメリットが大きいと思われるためです。事業を再開した場合に、黒字と相殺できる過去の赤字部分が全て消失してしまうデメリットは大きいと思われます。また金融機関や補助金申請あるいは入居審査などで決算書や申告書を求められるケースは多々ありますので、いざという時に困らないよう税務申告や納税は忘れずに実施しておくことが望まれます。休業中は税金は原則かからないと上述しましたが、例外があり、法人住民税均等割(年間最低7万円~)や固定資産税がかかる場合があるため注意が必要です。税務署や自治体に休業届(実際には休業届という届出はないため、異動届を出すケースが多い)を出せば、法人住民税均等割りはかからないようにできる場合がありますが、不動産を所有している場合には固定資産税が引き続き課されます。

 一方、廃業により会社を解散・清算する場合には、以後の確定申告や固定資産税をはじめとした税金が発生せず、経営面の負担からも免れることができるメリットがあります。しかしながら、各種の契約解除をしたり、解散や清算手続きをするための費用がかかったりと、手間と時間とコストがかかるデメリットもあります。特に債務超過会社の場合には、特別清算などの手続きが必要になり、基本的には債権者から特別清算による債権放棄をしてもらう必要があるため、債権者調整での同意が必要になります。裁判所が関与するため通常は弁護士費用もかかることになり、数十万円~の費用が必要となります。また、債務超過の場合、会社に債権者から債権放棄に応じてもらえないと清算が終結できないわけですが、日本公庫などの政府系金融機関が債権者にいる場合には、この債権放棄の協力を得ることができないケースがあり、破産手続きなど裁判所の法的手続きが必要となる場合があります。清算するための費用を残していない会社の場合には、清算自体ができず長期間放置されるケースもありますが、最後の登記から12年経過した株式会社は、登記官の職権でみなし解散となります。


 したがって、今後も会社という箱を使う予定があるなら休業、使う予定がないなら廃業、ただし廃業には弁護士費用などの一定の費用がかかる場合があることを考慮し、今後の法人と経営者個人の行く末をどうしたいのか慎重に検討のうえ、選択していく必要があるでしょう。



まとめ


 業績が低下してきたときにはステージごとに対応策が変わっていきます。何もかも一人で抱え込んで自己解決を目指すのではなく、税理士や金融機関など外部人材に相談しどのような選択肢があるのか情報を得ておくことが必要と思われます。選択肢が多いうちに打ち手を打つことでいち早く回復できる場合もありますので、できるだけ早い段階から相談するのが良いでしょう。



無料相談承ります


 税理士法人山岸会計では上述のような業績低下時の対応についての相談にも乗っております。初回相談は無料でお受けしておりますので、もし少しでも相談してみたいというお気持ちがある経営者の方や経理責任者の方がいらっしゃいましたお気軽に一度ご連絡頂けますと幸いです。

 ※相談したからといって弊事務所に顧問税理士を依頼する必要はございません。




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