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税理士から見た定款作成時の注意事項TOP5

最終更新: 3月15日

 定款の雛形はすぐ手に入る反面、どこに注意すべきか分からず、雛形をそのまま使ってしまっている経営者も少なくないのが実状です。しかし、定款作成には気をつけないと後々に影響を与える落とし穴が存在します。本記事では、税理士の目線から、税務や経営に支障がない定款をつくる上で気をつけるべきポイントについて解説します。


1. 株主総会の招集期日は決算日の翌月から3カ月以内


 定款に記載する定時株主総会の招集期日について、事業年度末日の翌日から「2ヶ月以内」に招集すると記載する例があります。実際に世の中に出回っている定款のテンプレートにもそうなっているものが散見されます。しかし、法人税申告書の提出期限の延長の特例申請を届出するためには、定時株主総会の招集を事業年度末の翌日から「3ヶ月以内」と規定しておく必要があります。


 上記をもう少し詳しく説明すると、法人税申告書は、原則として決算日の翌月から「2ヶ月以内」に提出することが必要です(法人税法74条)。しかし「申告期限の延長の特例申請」を届け出ることで申告期限を決算日の翌日から「3ヶ月以内」に延長することができます。つまり、申告期限を延長しておくことで、万が一2ヶ月以内に決算申告ができない事態が生じたとしても、3ヶ月以内に提出すれば無申告になることはなく期限内申告の扱いとなります。したがって、念の為に保険をかける意味でも、申告期限の延長の特例申請を届出ておくことがお勧めという訳です。


 申告期限の延長特例申請は、定款で定時株主総会を決算日の翌日から「3ヶ月以内」に招集すると定めた場合に認められるものですので、定款で定時株主総会を決算日の翌日から「2ヶ月以内」に招集すると記載した場合には認められません。法人税の確定申告は提出期限を超えてしまうと、無申告加算税が賦課されたり、青色申告承認が取り消されたりする場合もあるため、申告期限の延長の特例申請を届出しておくのが望ましいと言えます。したがって、申告期限の延長の特例申請を届出るために、定款での定時株主総会の招集期日を決算日の翌月から3ヶ月以内と記載するように注意することが必要になります。


 因みに、原始定款で2ヶ月以内となっていた場合でも、株主総会を開催し定款変更をすることができます。

※定款変更のためには株主総会での特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の多数で決議)が必要となります。申告期限特例申請の届出期限は、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までとなりますので、期中で対応すれば当期から延長が可能です。


2. 発起人の株式数は過半数で議決できるように配分


 定款の発起人欄には、発起人の氏名、住所および発起人が設立に際して引き受けた株式数を記載します。この株式数は、今後の会社運営の基礎となる重要な株主総会での議決権割合になります。深く考えずに共同創業者間で均等に配分してしまうケースが少なくないですが、税理士目線では、複数人で株式を引き受ける場合には、必ず過半数による議決ができるような議決権割合にしておくことが望ましいと考えます。


 例えば、株式を2名で引き受けて設立する場合、仲良く2分の1(50%)ずつ株式を発行するケースが考えられますが、この場合には、法人で重要な意思決定をする際に意見が揃わない限り、常に膠着状態になってしまい何も決められない会社になってしまう恐れがあります。膠着状態に陥ると、例えば、いつまでも決算承認ができず法人税申告書を税務署に提出できない無申告状態に陥ったり、重要な契約締結をしたくても意思決定できないまま相手を待たせてしまいビジネスチャンスを逃してしまうなどの不具合が発生しますので、そういった点を懸念点と捉える銀行や投資家も存在します。


 上記を踏まえると、必ず誰かが過半数の51%以上を持つような議決権割合にしておくことをお薦めします。また、4人で株式を引き付ける場合にも4分の1(25%)ずつ分け合うと同じ事態が発生してしまいますので、少なくとも1名については26%あるいは51%を持つように工夫することが望ましいです。


3. 消費税免税を考慮した決算月を選択する


 定款では、事業年度として毎年〇月〇日から翌年〇月〇日までと毎期の決算月を規定します。法人設立時に消費税の免税事業者の期間をできるだけ長く適用したい場合には、この決算月の設定に慎重な検討が必要です。


 具体的には、決算月の設定にあたって以下のような法人設立時の免税要件を満たす必要があります。


(1) 1期目は資本金が1,000万円未満であること


 法人の場合、資本金1,000万円未満で設立した場合には、1期目は免税事業者となります(2期目については別の要件を満たす必要があります)。この基準は、事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円未満であるかどうかで判断しますので、期中に増資しても影響はありません。ただし、2期目の事業年度開始の日(期首)において資本金の額が1,000万円以上の場合には2期目から課税事業者になってしまいますので注意が必要です。


 なお出資時には、出資金の半分までを資本金ではなく資本準備金とすることができますので(会社法445条2項、3項)、資本金を900万円未満とし、資本準備金を500万円などとして設立出資することで、消費税は免税で設立することが可能です。


(2) 2期目は更に特定期間等の要件を満たすこと


 2期目については期首の時点で資本金が1000万円未満であることに加え、以下の要件を満たした場合に免税事業者となります。


① 特定期間における課税売上高又は給与等支払額が1000万円以下であること


 特定期間とは法人の場合、事業年度開始の日以後6ヵ月の期間を差します。即ち「上期」の期間をいいます。つまり創業1期目の最初の半年において、課税売上高が1000万円以下の場合には2期目も免税事業者となります。仮に課税売上高が1000万円超となっても、同期間の給与等支払額が1000万円以下の場合にはやはり免税事業者となることができます。したがって、2期目が課税事業者になってしまうのは、1期目の上期において売上高及び給与等支払額の両方ともが1000万円超となった場合となります。実務的には売上高は外部との取引のため調整が難しいですが、給与等支払額については内部の人件費ですので、場合により支給水準や支給時期を考慮して設定することで上期で1000万円以下に調整できる余地があります。


 なお給与等支払額については、「支払った」段階でカウントしますので、例えば上期の賞与を下げて下期賞与の回したり、給与ではなく創業当初は業務委託を活用するなどして、人件費の支払額を抑える方法などが考えられます。


② 設立1期目を7ヵ月以下にする

 上記の事情は理解しているものの、設立1期目の特定期間(上期)の課税売上高及び給与等支払額がいずれも1000万円超にならざるを得ず、そのままだと2期目が課税事業者になってしまう法人もあります。その場合には、設立1期目の事業年度を7ヵ月以下とするように、決算日を調整して設定することで、2期目を免税事業者とすることができ、免税事業者の期間を12ヶ月伸ばすことができます。例えば2021年4月15日に法人設立した場合であれば7ヶ月後は11月14日となりますが、通常はその前月末としますので、決算日を10月31日と設定すれば、設立1期目は6ヶ月+α日ということになり、7ヶ月以下となりますから2期目も免税事業者となります。仮に決算日を11月31日にした場合には設立1期目が7ヶ月+α日となり7ヶ月超となりますので、特定期間において判定し、2期目から課税事業者になってしまう可能性が出てきます。

 以上から、定款で決算日をうまく調整することで、7ヵ月+12ヵ月の19ヵ月間免税事業者になることが可能となります。創業1期目を7ヵ月以下とすることで特定期間での判定がなくなり、上記①の判定しなくても良いということになります。これは課税売上高や人件費が大きい法人の対応となりますので、対策による消費税免税の効果は大きいことが想定されます。


※あえて課税事業者を選択するケースもある

 消費税免税の場合には、納税も還付もありません。しかしながら、不動産賃貸業を始めるため設立1期目から大きな不動産購入がある場合には、消費税が還付になる可能性があります。また輸出業の場合にも売上が免税となる関係から、消費税が還付になる可能性があります。そのような法人の場合には、設立1期目からあえて課税事業者を選択することができます。この課税事業者選択をした場合には一定期間免税事業者に戻ることができませんので、自社が免税事業者で良いのか、あるいは課税事業者で良いのかについては、設立1年目のみならず、設立後数年間の事業計画を策定したうえで、どちらが有利なのか慎重に判断するのが良いでしょう。


4. 本店所在地は資金調達を考えて決める


 本店の所在地は、定款の絶対的記載事項ですが、登記事項にもなります。定款では「東京都港区」など最小行政区までで良いですが、登記簿には丁目番地まで記載されます。登記簿は公開されますので自宅を本店所在地にした場合には登記簿にそのまま載ることになります。また、最近ではバーチャルオフィスやコワーキングスペースでも登記OKとして利用できる場合があります。


 ここで幾つか落とし穴があります。1つはバーチャルオフィスやコワーキングスペースで登記した場合です。創業の資金調達を日本政策金融公庫から受けるには、民間金融機関の口座登録の必要となりますが、バーチャルオフィスやレンタルオフィス、コワーキングスペース等では民間金融機関の口座開設が難しいケースが多く、法人設立しても創業融資を受けることができない事態になりかねません。2つ目は登記した自宅が賃貸の場合、賃貸契約において法人不可(ビジネス利用禁止)の物件の場合があります。その場合に自宅を本店所在地にして登記をしてしまうと契約違反となり表札も出せず郵送物が届かないなどデメリットが発生する可能性があります。


 したがって、本店所在地の設定では、資金調達やその後のビジネス展開を踏まえて、どの物件で本店をするのか検討すると良いでしょう。オフィス賃貸物件を借りるほどでもない場合のおすすめとしては、金融機関が運営している創業者向けのインキュベーション施設があります。こちらは賃料も相場の半分以下である事も多く、また金融機関のすぐ隣などにあり口座開設や本業支援などのほか、入居することで東京都創業助成金などの申請要件も満たせるなどのメリットがあります。単純にオフィス賃貸物件を探して入居することも良いですが、もし条件が合えば金融機関インキュベーション施設も検討してみる価値があるのではないでしょうか。


5. 取締役会は必要なければ設置しない


 法人の機関として、株主総会の他に、取締役会を設定することが可能です(会社362条)。取締役会はすべての取締役で構成するもので、代表取締役の選任や重要な業務執行の決定をする機関ですが、取締役会を設定するかどうかは自由となっています。取締役会は「各取締役の職務執行が法令・定款に適合しているかを牽制したり、業務の適正を確保するために存在し法人の信用度が増す」などと教科書的に言われますが、実際には中小企業においては、そのような内部牽制を必要としない法人が多く、取締役会があれば必ずしも会社の信用度が必ず増すものでもないというのが実状なため、設置するメリットがあるケースは少ないと考えられます。

 逆に、取締役会を設定するデメリットとしては、①必ず取締役が3名以上(会社法331条5項)及び監査役を1名以上(会社法327条2項)設置しなければならないため、役員として4名以上が必要であり、それらの役員報酬の支払を要することになります。また②代表取締役の選任において、各取締役の過半数で決することになりますが、代表以外の2名が結託することで、容易に代表取締役を変更させられてしまうリスクがあります(実際に、中小企業において、代表取締役以外の取締役が結託して反旗を翻し、代表取締役が変更となった例は少なくありません)。中小企業においては機動的かつ安定的な経営を重視し、あえて取締役会を設置することなく、代表取締役へ業務執行を一任する体制でも問題ないケースが多いです。



 以上、5つの注意事項についてご説明しました。何も考えず定款の雛形をそのまま使うことで決算日や申告期限、経営安定性にまで課題が生じることがあり得ることが分かってもらえたのではないでしょうか。決算期や株主構成、役員構成などの戦略は、会社毎にケースバイケースとなることから、創業に強い専門家によく相談しながら、制度をうまく活用して頂きたいと思います。


無料相談承ります


 税理士法人山岸会計では上述の定款作成時のような会社設立前の段階でも相談に乗っております。初回相談は無料でお受けしておりますので、もし定款作成に専門家の目線を入れたいというお気持ちがおありでしたらお気軽に一度ご連絡頂けますと幸いです。

 ※相談したからといって弊事務所に顧問税理士を依頼する必要はございません。





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